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数寄屋は初めに好き者ありき

11月19日の月ギャラでは、永田建築事務所の永田誼和さんをお迎えし、「私の建築作法」と題して、永田さんが建築に携われる中で基本としてきた考え方をお話いただきました。

数寄屋は初めに好き者ありき_c0113608_22362645.jpg永田さんといえば、篠栗幼稚園【写真上】とか木造建築というのがすぐ思い浮かぶのですが、「建築を始めた頃は鉄とガラスの近代建築にあこがれ、ミースが最も好きな建築家」だったという意外な話から始まりました。それがヨーロッパを放浪したときに近代建築の完璧な理論と現実の建物のギャップに落胆し、徐々に日本の木造建築に興味が移っていったとのことです。僕が学生の時にヨーロッパを回ったときに近代建築に感じた違和感も実はこんな単純なことだったのかもしれないと思いました。

数寄屋は初めに好き者ありき_c0113608_2236584.jpg作品を紹介していただきながら、スキップフロアとなっている自邸では、移動と熱エネルギーの効率が悪く、奥さんにすこぶる評判が悪かったけれども、それと引き替えに寒さに強い子どもが得られたこと、また、能を趣味とする施主のためにつくった能舞台のある住宅では、構造的工夫を随所に散りばめつつ、床下の壺の埋め方や松の絵制作では奮闘の末「エイヤッ」とノリで(個人的感想です)やってしまうなど、緻密さと豪快さが交互に入れ替わるとても楽しい話でした。
そしてメインは秀吉の茶室について研究をした上での「黄金の茶室」【写真下】の話。かつて「好き者」によって自由につくられていたものがいつの間にかワビサビという規範に縛られているとして現代の典型的な数寄屋の解釈に批判的立場を取り、それに遠州流茶道を20年以上続けている自身の経験を重ね合わせて平成の黄金の茶室を造り出した話はとても興味深いものでした。

木造建築の伝統に対する真摯な姿勢とは別に、話の節々に現れる個人的感情や自由な発想に人間的な魅力を感じました。現在はなんとツーシーターの車を乗りこなし、現代の好き者としてますます元気に活躍されています。
岡 大輔
by mono_koto | 2007-11-30 22:43 | MONDAY GALLERY
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