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せとうちの小さな美術館   東山魁夷せとうち美術館〜坂出人口土地〜鞆の浦を訪ねて

神戸で高校時代の同級生の結婚式に参加し、その帰り道に今まで見たくて見れなかった
瀬戸内の名建築を見てみたいと思って企てた今回の旅程。

まずは瀬戸大橋の四国側、香川県坂出市にある香川県立東山魁夷せとうち美術館に訪れた。
非常にコンパクトな美術館だが、充実感は高かった。建築よりも絵(展示)に感動した美術館は、山形の土門拳美術館に次いで2館め。11歳になる長男の「僕は東山の青が好きやねー」「いいなと思ったら東山のやったねー」という生意気な言葉が妙にうれしかった。魁夷の絵は、輪郭は甘く、多彩な光のいろに満たされ、根底に優しさがあるーそんな世界の連続でした。
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と同時に坂出の人工土地も訪れた。大高正人の設計による1968年竣工(39年前)の市営住宅。このプロジェクトは坂出市中心部のスラムクリアランスを通常ならRC造のアパートに建て替えて終わりとなるところを、建て替え住宅をそっくり空に持ち上げ、空いたGL平面を将来のニーズ(都市の新陳代謝=メタボリズム)のために空き地にしておくという斬新なものだった。(現在GLは商店と来街者・居住者用の駐車場)
今も世間を騒がす建築があまり長生きせず、寿命を待たずして壊されていく中、この場所は40年近く経った今でも住継がれている迫力はすごい。人工土地と呼ばれた第2のGLにはそれほどのアクティビティはないが、設計者らの理想都市への想いが凝縮されていて、それ自体はあまり古びていない。
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その後、讃岐うどんを食べて鞆の浦に向かう。
鞆の浦(とものうら)は、広島県福山市の沼隈半島の先端にある港町。瀬戸内海のほぼ中央に位置する鞆の浦は、満潮時は東西両側から潮が集まり、干潮時はここから潮が流れ出ていく、古代から潮待ちの港として栄えた場所。現在は昔ながらの街並みや石積みの岸壁など、往時をしのばせる静かな港町。
最近では湾を横切る橋を新設することにより、利便性の向上と観光化への駐車場不足に対応する計画が広島県と福山市により推進されており、その是非が様々に議論されている。http://npo-tomo.jp/kakyou/
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かねてから環境デザイン機構の佐藤俊郎さんから話に聞いていた、その鞆の浦を訪れた。
「鞆の浦まであと5km」の交通標識の後に視界に飛び込んできた乗り合いバス。
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鞆鉄道バスのボンネットバスで、宮崎駿監督の「となりのトトロ」のねこバスを彷彿とさせませんか?もちろん、こちらの方が先だそうです。
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鞆の町の散策の後、以前浄水通りでギャラリーをされていた新田さんが鞆のまちなかで伝統的な木造住宅をギャラリーに改装している現場を見せていただくことに。新田さんは作りたい人とそれをサポートする設計する人や作る人との間の「よしとする部分のギャップ」に苦しんでおられた。とはいえ、目の肥えたこだわりでつらぬかれたギャラリーは、良いものができる予感がした。いろいろアドバイスを求められたが、レベルの高い難題ばかりだったので、見知らぬ設計者・施工者をかばってばっかりの応対でした。
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ギャラリーは右手に改装中。数件となりにはトトロの家のモデルになった住宅も。

今回も新しい建築から古い街並みまでいろいろ見てみたが、こころに残っているのはどちらかというと古いほう。そこで住む人の気持ちやその場所で生きていく葛藤にふれたことが、そのまちへの憧れにつながっていく気した。
当たり前のはなしだが、新築の建物は、新築の建物の図面だけを描けばいい。かたや、既存の建物を改修する場合や、街並みを考える作業は、既存の図面を描いて(状況を把握して)、そこから、そこにどう手を加えるかの、新築の倍以上の手間がかかる。

ただ、その手間の先に生まれるものは、新築以上の時間を併せ持つ魅力多いものになる可能性が高い。過去のものを大事にトレースする作業の延長にある創造性は、いいものへの確かな道のりなのではと思った旅でした。

杉本泰志
by mono_koto | 2007-10-10 22:15 | モノコト日記
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