「参加する劇場から愛される劇場へ」

去る2007年9月1日、竣工直後の日田市民文化会館(設計:香山壽夫建築研究室)の見学会と
シンポジウムのレポートです(日本建築学会大会関連行事)。

敷地の日田は大分県西部の都市で人口74000人、周囲を阿蘇・くじゅう山系や英彦山系の山々に囲まれた盆地。古くから北部九州の交通の要衝だった日田は、江戸時代、幕府直轄地・天領として九州の政治・経済・文化の中心地として栄え、歴史的な街並みで知られる豆田町にはその面影が色濃く残されています。最近では平成17年に前津江村・中津江村・上津江村・大山町・天瀬町の1市2町3村で合併し、新日田市がスタートしています。
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日田市文化会館の設計者を決めるエスキースコンペには我々、環・設計工房も参加し、結果は佳作という結果でした。香山先生が一等という知らせを、大学の大恩師が勝者というを誇りに思う気持ちと、自分たちの労作が一等を勝ち得なかったという複雑な思いで聞いたのでした。奇しくも香山先生はコンペの締め切りの前日、大橋の居酒屋すずめに「芸工大の同窓会」にいらしていて、我々はてっきり、「香山先生はコンペをあきらめたのでは」との甘い期待を持ったのでしたが、コンペ案は香山先生の緻密で美しいスケッチが前面に押し出された案での晴れ晴れしい勝利でした。
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日田市民会館エスキースコンペ 環・設計工房案

香山壽夫とは?
九州芸術工科大学のキャンパスの設計者であり、東京大学の名誉教授。吉武泰水やルイス・カーンに師事した建築家。九州では伊万里のトラピスチン修道院、瀬高町立図書館等の作品がある。学校建築や劇場、宗教建築の作品が多い。私個人の接点としては、恩師、故岡道也先生が学生時代に香山先生と机を並べて芸工大キャンパスに携わっていた時の話、下山田小学校がコンペで当選した時の審査委員長、芸工大の同窓会で始めてお会いした時にすぐに名前を覚えて頂いて、しかも取るに足らない話題にも下りて話をしてくれた人、正直、いつかこういう人に少しでも近づきたいと思わせる憧れの人です。
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伊万里 トラピスチン修道院   香山壽夫

日田市文化会館とは?
大小二つのホールと市民ギャラリー等からなる施設で敷地面積9500m2、延床面積8900m2、建設費約40億の建物。身近な例と比べるとアイランドシティの小中学校の1/4の敷地面積、6割の延べ面積、1.5倍の建設費。

外観で印象的なのは周囲のまちなみと高さを合わせたという深い軒。高いフライタワーや劇場のボリュームは「引き」のない現状の敷地では、ほとんど感じられず、町の中にただ広い屋根とその下に広がる「木」の色をした奥行きのある空間がひろがるという感じ。建物の外形がどうこうという視点はなく、ただガラスの奥のちょっと贅沢な空間のひろがりとこれからそこで行われるであろう営みへの期待、そこへ関心が絞られるつくりになっている。ガラスの壁面というと、普通すこし拒絶されたイメージを感じるが、深い軒の下のガラスは、暗さで反射がない分、中の様子がダイレクトに見えて、建物の外皮として熱環境的にも説明のつく、すごい可能性を秘めている。
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ホール内観。徹底的に利用されている地場産材。杉・桧・小鹿田焼の土・左官技など、日田だから実現できた技が随所に見える。
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「公共の建物」のあるべき姿とは?
シンポジウムの冒頭で香山先生は「愛」より「公共」という言葉に焦点を絞って話をされた。
「都市とはひとに喜びや安らぎを与える場所である」「都市とは共に住む意識を確認できる場所である」
この場合、都市は建築に置き換えても考えられそう。一方、
「うたや踊りはいつも共同体の共有するよろこびの中心にある」その箱になる場も中心かも。
そんな中でものづくりについては非常に堅い決意ともとれる言葉も。
「我々の仕事は結局、ものが手がかりになる」
「住民参加の場合も最初から形を提示する。(最初から形を提示することについては)反論もいろいろあるが、形を参加する人々の意見を聞いて柔軟に変えていくことを条件に、具体的に、早い段階から形を見せる」そんなプロセスの積み重ねが独りよがりでない共有される建築を作っていくのかもしれない。
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日田市民文化会館は12月23日にグランドオープンの予定。
皆さん、豆田の街並み、その中の天領マート(環・設計工房設計)、サッポロビール園、いいちこ焼酎工場、琴平温泉(おすすめ!)などと一緒に日田を訪れてみてはいかがですか?

杉本泰志
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by mono_koto | 2007-09-04 01:06 | モノコト日記
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